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Runner's High

映画『ブレードランナー』は斬新なアート・スタイルと奥深いテーマによって、1980年代の人々に新たなヴィジョンを提示した。今なおカルト的人気を誇り、私も雨の日の高層ビルを見上げるとしばしばこの映画のことを思い出す。しかし意外なことに公開当時はさほど評価されず、早々に上映は打ち切られてしまったという。奇妙な発明家や冴えない音楽家が後世にその功績が認められるように、この映画も真価を理解されるのに、やや時間を要したようだ。
さて、ここにひとつ再評価の待たれる作品がある。『Mirror's Edge』は私が思うに現行機における最高傑作のひとつなのだが、不幸なことに正当な評価を受けることなく、一部の(私を含む)熱狂的なファンをのぞいて、その存在はほとんど忘れ去られている。ゲームとして前衛的でありながら高い完成度を誇り、唯一無二の抜群のアート・センスが魅力を放ち続ける。


ジョージ・オーウェルの予言の通り、この都市でも監視が始まった。ビッグ・ブラザーの支配する1984年のように、本作の舞台となる未来都市――おそらくTOKYOと思われる――も誰かがどこかで見ている社会になりつつあった。電子メールはのぞき見られ、通話は傍受される。その結果、異論は徹底的に排除され、権力者にとって居心地のいい街に作り変えられていく。核戦争後、人々は棒切れで戦うようになると言うが、監視社会に抵抗するには最もプリミティブなもの――走ることが武器になる。確かな情報伝達の手段は走って直接届けることなのは、今も昔も変わらない。場所がマラトンの丘から高層ビルに移っただけのことである。次世代移行前夜、この未来都市を再訪する。
前回のプレイから4年。ビルの屋上にあがるのは実に久しぶりだったが、いざ走り始めてみると感覚はすぐに蘇る。アクションだけでなく、道順も新たなショートカットを探す余裕をもつほど覚えている。それは自転車の乗り方を、何年も乗っていなくても決して忘れないのと同じなのかもしれない。

ビルの森を全力で駆け抜けると、ランナーだけが味わえる特別な高揚感を味わえる。これまでに3周はしていたが、それはいまでも変わらない。一人称視点が敵に追われる恐怖を倍増し(足音が迫るあの緊張感!)、逃げ切れたときの安堵はより大きなものになる。そして屋上から見渡す大都市のパノラマは最高の絶景だ。特にChapter1とChapter3は何度走っても飽きることがないし、雰囲気という点でChapter9の夜の都市は格別だ。


ほとんど白で構築された都市は、モダンで静謐な印象を与えるが、同時に病理的な潔癖さも感じさせる。住民を匿名化し、画一的であるよう求めるのは、陰謀を企てるひとりの人間ではなく、この都市なのかもしれない。
私はときに都市が呼吸しているように感じる。多くの人が住まう場所というだけのはずなのに、まるでそれ自体が意思をもち、鼓動しているよな巨大な生き物のように思えるのだ。それを感じるのは、地下鉄に乗るときだったり、排気口から出る空気を吸ったときだったりさまざまであるが、そんな感覚を『Mirror's Edge』は適格に表現している。この都市は、ランナーを体内に入り込んだウイルスのように、あらゆる手段を使って排出しようとしてくる。そういうわけで、この未来都市を自らの足で駆けるというのは、何か重要な意味があるような気がするのだ。
2013.11.22 | Comment(2)

Comment

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ツイッターでフォローがされたついでに
ブログを拝見させていただいてますが、
『Mirror's Edge』がアート的にもゲームメカニクス的にも
もっと評価されるべきというのは同意ですね。
(次世代機にて続編が発表されていますし、あだ花で終わることなく評価されているとも思います)

自分は未来世界と社会の表現って部分では
「deus ex HR」がここんとこのフェイバリットでした。

2013/11/22/ 17:21 from EAbase887  URL Edit

>EAbase887さん

コメントありがとうございます!

まさか続編が出るとは思っていませんでした。
一定の評価は得ているようで嬉しいです。次の情報が待ち遠しいですね。

『Deus Ex』は中盤で中断しているのですが、いい作品ですよね。
あの未来の世界はいまの現実世界の延長であるので、深く考えさせられます。

ところで、EAbase887さんの考察は実に鋭く、毎回じっくり読ませていただいています。
そんな方にコメントいただけるとは・・光栄です。
Twitterでもブログでもどうぞよろしくお願いします。

2013/11/24/ 13:06 from dot  URL Edit

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