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The Dark Side of the Moon

ピンク・フロイドのアルバム『狂気』から40年、『FarCry3』が再びあなたを狂気の世界へいざなう。舞台となるルーク・アイランドは手つかずの自然とスカイブルーの海が広がる美しい島だ。忙しく退屈な日常を忘れ、最高のバカンスを満喫できる。だが、この島には隠された側面がある。それは暴力、麻薬、セックスにまみれた凶悪なもう一つの顔だ。そこで起きる目を背けたくなる現実を、あなたは一人の米国人、ジェイソン・ブロディを通して目撃する。さあ、狂気の世界へ飛び込もう。月の裏側へ、ようこそ。


近くにあった武器に手を伸ばすと、目の前の男は俊敏に反応し、私の首筋にナイフを押し当てた。「私を殺す権利はあるが、私にも同じ権利がある」。奇妙な円盤のアクセサリーを身につけたその男はこう言って、デニスと名乗った。部屋は薄暗く、まじない師が使うようなお香のにおいが満ちていた。私――ジェイソン・ブロディにとってその日は最悪な一日だった。目の前で兄弟を殺され、本物の狂人に追い回され、つり橋を壊されて川に落ち、おまけに変な刺青まで彫られたのだから。ひどく混乱していたが、デニスは警戒しつつ私に起きた出来事を簡単に説明してくれた。こちらが抵抗する意思がないことを示すと、彼は私を縛る縄を荒々しく切って言った。「君を解放してあげよう」。


ここから物語は始まる。最高のオープニング・シーケンスだ。『Far Cry3』はゲームとしての面白さを高めながら、こうしてストーリーテリングの部分も両立している。これまでゲーム的な部分とストーリーテリングの部分とは、水と油のように相性の悪いものと考えられてきた。だが『Far Cry3』はどちらかを犠牲にするのではなく、それが共存可能で、しかもこのハイブリッドこそがゲームにしかできない優れた体験を生み出せることを示してみせた。

栓を開けた炭酸飲料のように、どんなオープンワールドも魅力は時間とともに薄らいでいく。だが『FarCry3』は違った。舞台となるルーク・アイランドには興奮と驚きがめいっぱい用意されていて、最後までプレイしてもその輝きが失われることはなかった。「この先には何があるんだろう?」「ここの景色は最高だ!」といった、少年時代、裏山で遊んだときの純粋なワクワクを再び体験することができる。
絶景ポイントを探したり、隠された遺跡や回廊を見つけたり、ときに野生動物を狩り(ときに狩られ)、気ままに水上バイクに乗ったりパラグライダーで滑空してみたり。敵に追いつめられて崖から落ちたら洞窟にたどり着き、奥でとっておきの絶景を発見といった嬉しいハプニングもたびたび起こる。前作は地味でなにかにつけて不便だったが、そのあるべき姿を形にして新しいアイデアを身にまとわせた結果、文句のつけようのない完璧な作品になった。


だが、この作品を傑作たらしめているのは、テーマ性にある。この作品のテーマ「狂気」は自ら声高に主張することはなく、プレイヤーはそれを意識せず、優れたシューターとしてこの作品を終わらせることも可能だ。だが、さまざまな部分に投影されたものをつなぎ合わせ、特にセリフに注意深くなれば、この作品のもつもう一つの顔が見えてくるはずだ。そのテーマを考えると、この作品の厚みはいっそう増すことだろう。


『FarCry3』はファースト・パーソン・シューターのひとつの完成系と断言しよう。この死ぬほど美しい狂気の楽園は、あなたが戦場や大都市にいく予定をキャンセルしてでも訪れる価値はある。ちなみにアルバム『狂気』は“There is no dark side of the moon really. Matter of fact it's all dark.”という歌詞で終わるのだが、この作品のもつテーマ性を通してその解釈をなんとなく理解できたように思う。

Score: 10/10
2013.12.21 | Comment(2)

Comment

No title

やはりスコア満点でしたか!
ストーリー、グラフィック、キャラ設定、自分も遊んでいて、これほど変化を感じられるゲームだとは思いませんでしたね 発売前からdot shiさんが注目されていたのも頷けますよ!
特にストーリーではdot shiさんも記事で書かれてますけど「狂気」、プレイヤーがジェイソン・ブロディになり、次第に「ストーリー」と「狂気」がいつの間にかシンクロされるストーリー・ディテールには納得させれましたね

それとこの間はCoopありがとうございました&お疲れ様でした! 色々なトークが出来て楽しかったです また是非やりましょう!

2013/12/21/ 20:51 from NAKARx4G  URL

>NAKARx4Gさん

コメントありがとうございます!

満点以外考えられませんね(笑)
たしかにお金の使い道がなかったり、サイドミッションがしょぼかったりはしましたが、
そんなのは無視できるほど全体として完成していました。

そうなんです!そのシンクロという表現・・いいですね。
いつの間にか狂気が忍び寄っているというところが巧みでした。

こちらこそCo-opありがとうございました。
是非近いうち、できれば年内にやりたいですね。トークネタ仕込んでおきます(笑)

2013/12/22/ 23:21 from dot  shi  URL Edit

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